Hello, hollow.

空っぽな日常からの逃避行

レンジで字が消えるのは「当たり前」の話ではない

blog.jnito.com

こちらの記事を拝見して覚えた違和感について書こうと思います。

 

おことわり

まず、こちらの記事の主旨である

  • 「インターネットの情報には良い物と悪い物があり、子どもたちだけでその真似をするのは危険である」というのをお子さまに伝えてあげたこと
  • 保護者としてお子さまのインターネットの利用法に気をかけ、注意点等を本人に説明してあげること

に関して異論はありません。しかし、ただ一点気になったのが

  • 「電子レンジで字が消える動画」は不思議でも何でもないこと

本当にそうでしょうか。ちょっと乱暴過ぎやしませんかね。

 

本当に"当たり前"?

通常、小学生がノートに鉛筆で字を書いても、その字が消えてなくなってしまうことはまず無いでしょう。濃い芯を使っていると煤が手で伸びてしまうことならあるかもしれませんが、それでもフリクションのように"きれいさっぱり"字が消えてしまうわけではありません。

そして件のご家庭にはフリクションペンが無かったということもあり、おそらくYouTubeの動画を見たときの息子さんは「なんで字が消えるんだ!」とさぞかし不思議に思われたことでしょう。

そう、"不思議"なんですよ、書いた字が消えるという現象は。

もちろんそれは魔法でも何でもなく、種があり、仕掛けがあることです。しかし、その種や仕掛けをきちんと説明するためには

  1. なぜフリクションで書いた字は消すことができるのか
  2. なぜ電子レンジは物を温められるのか
  3. なぜフリクションの字を消す道具として電子レンジを使えるのか

といった知識が必要になります。全て詳しく説明できますか?

「特殊なペンだから」と言われてしまえばまあその通りではあるんですが、じゃあどう特殊なのか。どういう物質のどういった性質を利用して字を消しているのか。答えられますか?

よく仕組みを知りもしない道具を「そういう物だから」と使っている人は「当たり前」という言葉を安易に使うべきではないと思います。

ちなみにフリクションの日本発売が2007年(http://frixion.jp/story/)、今ではすっかり定番の筆記用具ですが、十年前の市場には存在していなかったのです。

初めて見たときに「すごい」と感じませんでしたか?

「仕組みはよくわからないけどすごい」

と、感じませんでしたか?

わたしたちにとって"当たり前"になったのはあくまで日常生活におけるフリクションという商品の存在だけであって、その仕組み自体は決して当たり前などでない、開発に30年以上も費やしたほどの大発明なのです。

かつてニュートンが落下するリンゴから万有引力の性質を見出したのも(後付の俗説という話は置いておいて)、元々は「不思議」「なぜ」が出発点だったはずです。疑問や好奇心というのは、人間の創造性や思考力を育む最高の種なのです。

また、今回の事故が起きた原因を説明するためには、先程の要素に加えて

  1. なぜ鉛筆や普通のボールペンの字は温めても消えないのか
  2. なぜノートを電子レンジに入れると焦げるのか

という知識も必要になります。それらの要素を一切踏まえずに「不思議でも何でもない、当たり前のことなんだよ」と一言で片付けるのは、字が消える現象に純粋な感動を覚えたお子さまに対してあまりに不誠実だと感じたのです。

  

まとめ

もちろん、高度な科学的解説を小学生のお子さまにそのまま言って聞かせるべきだとは思いません。しかし要旨だけを噛み砕いて教えてあげたり、高度な点は「今はちょっと難しいけど、理科を頑張って勉強したらわかるようになるよ」と励ましてあげることで、この"失敗"を未来につながる"活力"へと転換できるのではないでしょうか。

「やってはいけないこと」ばかりを増やしてしまうと、子どもは失敗を恐れて「何もやらな」くなってしまいます。加えて、子供の知的好奇心を全て「当たり前」で片付けてしまうと、疑問を抱かない子に育ってしまうのではないかと心配になったのです。それこそ”インターネットに書いてある情報を、真偽の確認もせず鵜呑みにする”ような、自分で物事を考える力の無い人間になってしまうのでは、という危惧がありました。

小学生くらいのお子様を持つ保護者の方にとって肝要なのは

  • お子さまの「なぜ」を大切にしてあげること
  • お子さまの「なぜ」に、論理的な根拠を持って真摯に答えてあげること
  • 説明できない場合は、お子さまと一緒に学ぶという姿勢

だと思うのです。

YouTubeのトンデモ動画に子どもが目を輝かせていたときに言ってあげるべきは

「こんなの当たり前だよ」

ではなく

「これはこういう仕組みなんだよ、"不思議"だよね」

なのではないでしょうか。

初めましてこんにちは

ksと申します。

自身の綴った文章を後で見返せるように、形として残るように記そうと思い立ちブログを開設しました。
何を書くかは未定です。日記なのかポエムなのか、エッセイなのかレビューなのか、はたまた小説なのか。
基本的に読者の存在は想定せず、自由気儘に続けていきたいと思います。

それじゃどうもさようなら

初めまして

初めまして